萌えよ!アニメ道 第二十回『ヨコハマ買い出し紀行』(1998年版)

illustration by ゔぇろ

皆さんどうも!萌研の大怪獣、藤吉なかのです。

も〜〜いよいよ空気が凍えて仕方がない季節ですね!こんな日はもう家から出ず、ゆっくりコーヒーでも飲んでゆっくりしたいな…なんて思う人も多いんじゃないでしょうか?

昨年は真冬に見るべき萌えアニメとして傑作アニメ『けいおん!』より「冬の日」を大推薦しましたが…

今年も萌研より、それに並ぶ傑作を真冬のお供として紹介したいと思います!

そんなわけで今回取り上げるのは…ヒーリング系OVAの圧倒的名作『ヨコハマ買い出し紀行』!!

原作漫画も大人気な本作ですが、それと同様にアニメも物凄いクオリティに仕上がっているんですよ!

どこを切っても隙のない仕上がりでありながら、視聴者をリラックスさせてくれる「てろてろ」とした雰囲気も持ち合わせる本作。

今回はそんな冬びよりにぴったりな本作の魅力を、どしどし語っていきますよ!!

『ヨコハマ買い出し紀行』とは?

そもそも『ヨコハマ買い出し紀行』とは、芦奈野ひとし先生による漫画作品。

1994年から月刊アフタヌーンにて連載が始まり、その後10年近くも連載された人気作です!

本作は近未来の日本・三浦半島付近を舞台とした、SF人間ドラマが持ち味の作品といえます。

文明がゆるりと衰退していき、かつてよりも人の営みが小規模になった「夕凪の時代」の日本。

本作はそんな時代を慎ましく生きる人々と自然の営みを優しく穏やかに描いており、その雰囲気は独特!

カフェを営む”ロボットの人”である主人公・アルファさんのちょっとお茶目なキャラクターも相まって、肩の力を抜いて感動できる作品です!

ジャンル的にはポストアポカリプスっぽさもあるものの、作品全体の悲壮感は薄めなのが面白いポイントで、、

SFというよりも寧ろ日常系にそういった切ないエッセンスが散りばめられている…という絶妙な塩梅が、唯一無二で素敵なんですよね〜

そんな洗練された作風からファンも多い本作を1998年に初めてアニメ化したのが、今回紹介するOVA版。

OVA版『ヨコハマ買い出し紀行』の魅力は、なんといっても美しい画面でしょう!

アルファさんの感情を鮮やかに描き分ける表情作画はもちろん見所のひとつなんですが、、

やっぱりここで激推ししたいのが、背景美術の美しさ!

『ヨコハマ』世界に生きる人々だけでなく、その世界を構成する「自然の営み」そのものをキャラクターのように重視して撮る……

そんなこだわりが随所に感じられる背景美術の数々は、時にはキャラクターよりも圧倒的にフィルムを支配しています。

特に以前もこのブログで紹介した美術の匠・加藤浩さんが手がけた前半話数の美術は、明らかに格が違う美麗っぷり!

どこかガタが来ている建造物、活き活きと伸びる新緑、心地の良い清流…それら全てが画面で調和している凄さ。

現実の絶景を超える存在感が絵筆によって、4:3の画面上で発揮されている感動といったら…もうねぇ!?

アニメという箱庭に留められる限界の美しさが実現している感覚すら覚えてしまう、この圧倒的な美術の仕事ぶりです。

この凄まじい美術を見るためだけでも、DVDを買う価値がありまくりですよ!!

ほんわかゆったり癒し系…だけじゃない!?『ヨコハマ』の圧倒的演出力

…とまぁそんな具合で背景美術に目が行きがちな本作ですが、、

当然ながら映像全体を的確に制御する演出力もとんでもなく凄いんですよ!

本作の監督を務めたのは、80年代を代表する美少女アニメ『魔法の天使クリィミーマミ』などの監督を歴任した名匠・安濃高志さん!

非常にベテランの方なのもあってか、ここ最近は知名度が低くなりつつあるかもしれないんですが…

コアな美少女アニメファン的には、「演出によって何気ない日常を描く」手法を確立した大傑作『魔法のスターマジカルエミ』「蝉時雨」を手がけたことでも有名です。

実際に原作者の芦奈野先生もインタビューにて、監督についてこのように語っていたりするんですよ。

「もうかれこれ10年くらい前、その時代に安濃さんの「蝉時雨」が仲間内で話題だったんですよ。今までこんなのあんまりなかったと。普通あの時代からアニメって、ドンパチドンパチがはやり始めて、動きがどうか、というのが第一だったんですけど、安濃さんは間というか、空間というか、そういうのを大事にしている印象を受けました。今回、その方が監督をしてくださるということで、なんと幸運なんだ、と思いました。」

(『ヨコハマ買い出し紀行』OVA DVD特典より)

まさに原作とアニメが相思相愛の本作、そんな最高の状況下で安濃監督の才気はもう迸りまくり!

まぁ改めて言うまでもなく、芸術的なまでのロングショットは抜群の仕上がりですよ。

先述したような美術のハイクオリティっぷりはもちろん、奥行き感のある構図の妙味も冴え渡る強烈な一撃と言えます。

しかし本作の魅力は、こうして単にスクショを見れば分かるような構図の凄みだけにとどまりません!

むしろ1枚のスクショからは想像が難しい「時間」のコントロールこそが、OVA版『ヨコハマ』を傑作たらしめているのです!!

印象に残る「時間」といえば、やはり柔らかな人と自然をゆったりと撮る長回しの数々。

アニメと長回しはどうしても相性が悪くなりがちですが、本作は様々な工夫で長回しを無理なくフィルムに組み込んでいます。

例えばこの、アルファさんの元を訪れた同型機・ココネさんがカメラの使い方を教えてくれる…という長回しシーン。

構図自体もこれまで例に挙げたものよりは強靭ではない為、一見すると視聴者の集中力が「保たない」画面のように感じられるんですが、、

実はこのカット、空中で風に吹かれる雲の動きによって影の位置が変化する…という、何気ない自然の営みを丁寧に描いているんですよ!

この「雲の位置によって日陰が移動する」という自然のリアリティをアニメに持ち込むセンスも凄いですし…

そして単純なハナシ、影が動くことによって画面に変化が出てルックも面白くなりますからね!

ゆったりとした長回しに自然の「揺らぎ」を加えることで、カットに「本作らしさ」という意味を醸し出すだけでなく、、

同時にルック(=見た目)の美しさで、もっとシンプルな視覚的快感も取り逃がさない。

アニメにとって”取扱注意!”な長回し手法を、控えめながら効果的に使った名シーンと言えますね。

こういう名シーンから分かるように、OVA版『ヨコハマ』は「時間」のコントロールがとにかく巧みなんです。

そしてそんなポイントにこそ、未だに本作が根強く支持される所以があるのかなぁと思ってまして…

というのも、僕は漫画とアニメ(映像作品全般)で最も違う要素って「時間」だと思っているんですよ。

だって、漫画だと読者側の匙加減でストーリーを遅く読むことも早く読むこともできますけど…

それがアニメになると、どう頑張ったってそうはいきませんよね?

全視聴者が作り手が設定したテンポ感でストーリーを見守ることになる。まぁ倍速視聴とか手段はあるのかもしれませんが、それってもう「消化」の為の最終手段でしかないし。

つまりアニメは漫画と違って、視聴者に作り手側が「時間の解釈」を押し付ける芸術なんです。

漫画のファンからすれば、アニメを再生した途端にこれまで自分が心地よく感じていた「時間の解釈」を奪われて、急に他人が心地よく感じるテンポに合わせろ!と言われてしまうわけで…

そう考えると「アニメ化」って、ともすればめちゃくちゃ暴力的な行為なんですよね。

ただ、そんな「時間の解釈」がOVA『ヨコハマ』は抜群に上手いんだと思うんですよ!

20秒を超えるゆったりとした長回しで作品の世界観を活写したかと思いきや、1秒未満の激しい高速カットでコミカルさ/デフォルメ感も忘れずに描く。

絶妙な緩急を自在に使い分けて、完成された「時間の解釈」を視聴者に届けている。

その解釈が原作ファンと合致したものだった…いや、むしろファンの想像を超えてゆく凄まじいクオリティだったからこそ、この1998年版『ヨコハマ買い出し紀行』は傑作として評価されているのでしょう。

さて、今回の『萌えよ!アニメ道』はいかがでしたか?

最終的には「漫画のアニメ化ってムズすぎ〜〜〜」というとこまで話題が飛びましたが、、、

そんな「ムズすぎ」ることを軽やかにやり遂げているのが1998年版『ヨコハマ』の凄いところ!

モノが高額なだけに気軽にオススメしづらいところですが、ぜひチェックしてみてほしいですね〜〜

ちなみに『ヨコハマ買い出し紀行』は2002年にも異なるスタッフ陣で再度OVA化されていたりするんで、そっちも要チェック!

こちらも望月智充を監督に迎えた大充実作です!

これからの寒い寒い冬も、アルファさんと一緒に乗り切っていきましょう!

なんだかコーヒーが飲みたくなるアニメよね♪ もちろん砂糖はたっぷりで!

コメント

  1. 椎名へきるさんが声優でしたね。確かご自身のラジオでラジオドラマをやっていてCDも出てるはず。今度アニラジ特集もやってください。
    海外のSF作家に人気が高い作品ですし中国でもインテリに人気があるようです。

  2. どこにも配信されてなくて泣いた

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