萌えよ!アニメ道 第一六回『誕生-debut-』

illustration by ゔぇろ

皆さんどうも!萌研のMr.オータム、藤吉なかのです。

「読書の秋」「アニメの秋」な~んていう暇もなく、空模様はすっかり冬真っ盛りな昨今ですが……みなさんアニメ見てますか!?

個人的に、今期はTVアニメに熱中できる作品が多くないこともあり、アニメ映画に喰らうことが多いですね~やっぱり多幸感に溢れたアイドルものとか!

一大娯楽作『ゾンビランドサガ ゆめぎんがパラダイス』はもちろん、ファン的には感涙の『アイカツ!×プリパラ THE MOVIE 出会いのキセキ!』とかも最高の一言でして……

最近また「アイドルアニメ」というジャンル自体を見直したくなる時期になってきたんですよ~

というわけで今回は数あるアイドルアニメの中でも、個性が際立つ傑作OVA『誕生-debut-』を紹介します!

『誕生-debut-』とは?

PC-98用の同名ゲームを原作とするOVA『誕生』は、ジャンル的にはいわゆるアイドルもの

1994年にVHSとLDで発売され、2002年には全2話をまとめたDVDも発売されたのですが…

いかんせんDVDがちょっとレアで手に入りづらく、今日ではあまり顧みられることがない作品です。

自分も本作のDVDはついぞ掘り当てられず、比較的安価なVHSをDVDに焼いて視聴しました…

そんな本作のヒロインたちは、小さい芸能事務所のアイドル見習い3人

まずは運動神経はバツグンながら、気が強い性格から何かと他人とぶつかりがちな亜紀

太めの眉と真っ直ぐな性格がめちゃ可愛いんですよね~~

知的な美人ながら、控えめな性格と身体の弱さがネックとなるさおりさん!

「萌え」というよりも「惚れ惚れ」、「かわいい」よりも「美しい」……そんな王道ヒロインすぎて最高!!

アニメキャラのお化粧ってケバケバしく見えすぎちゃうことが多い気がするんですけど、こんなに化粧が似合うの凄いよ!

俺、生まれ変わったらさ……委員会の仕事でたまに話すさおりさんに密かに憧れ混じりの恋心を募らせるものの、休日にイケメン年上彼氏と歩いているところを偶然見ちゃって、自分の無力さに絶望しながら枕に届かぬ想いを叫ぶ同級生の冴えない男子になりたいな。

なんやキャラ紹介の途中、急に強い情念が通ったな……

人を惹きつける天性の愛嬌を持つが、全体的にステータスは低めな久美ちゃん!

いちばん「萌え」という言葉が似合う元気印!コロコロ変わる表情がとってもラブリーです。

彼女らは一癖も二癖もあるけれど、みな羽化すれば最高のアイドルになる美少女たちです。

原作ゲームは、プレイヤーが新人マネージャーとなってそんな彼女らを育て上げる、いわゆる「お仕事シミュレーションもの」なんですが…

実はこれをメディアミックスするにあたり、アニメでは原作と異なったアプローチが取られていまして!

それがこの『誕生』という作品を、グッと面白いアニメに変えているんです!

OVA版『誕生-debut-』の先鋭的なコンセプト

OVA版『誕生』のコンセプトを一言で言うなら、「アイドル達が劇中で出演している映画・ドラマのアニメ化」……これに尽きるでしょう。

例外として、OP映像では撮影中のオフショットが流れます!この遊び心もイイネ~~

アイドル達の素の姿や私生活は殆ど描かれず、ただ彼女たちが作品世界内で出演したドラマ(という体のアニメ)がそのまま流れるんですよ!これ凄くないッスか!?

亜紀・さおり・久美の日常や活躍の裏側……いわばプライベートにフォーカスしがちなのがゲーム版なら、、

アニメ版で描かれるのはドラマに出演している、どこまでもパブリックな亜紀たちの姿。

裏側の目線からアイドル達の成長を見守る一般的なアイドルアニメとは、ちょっと質感が違います。

一般的なアイドルアニメの多くはアイドル業の舞台裏(=プライベート)を描くことで「偶像の人間味」を描きがちですが、、

『誕生』はその真逆!あくまで「偶像としてメディアに映るアイドルそのもの」の姿を魅力的に描くんですよ。

二次元におけるアイドル(偶像)のプライベートを覗くのではなく、彼女らが全力で「偶像」として演技して輝くメディアでの姿をアニメーションとして残すという試みは、非常に興味深いモノがありますよね。

「アイドルアニメ」というジャンルへのメタ的な目配せも効いた本作の筋書きは、実はしれっと刺激的かもしれません!

それに作品世界で実際にアイドルを推しているファンの目線で、アイドルにまなざしを向けられる……というのもアニメ版『誕生』の面白いところです。

この子達がユニット売りされてドラマに出ている感じも、作品世界内のファンからすれば楽しいのかな~とか思いますね

シミュレーションゲームというのは、自ら能動的に選択肢を選ぶことでキャラや世界に没入した「体験」を積み重ねられるのが面白いところですが……

『誕生』はそこから一歩引いて、逆に視聴者を徹頭徹尾アイドルの活躍をモニター越しに眺める「観客」にしてしまうのが逆転の発想と言えますよね!

しかし「観客」になったからといって、キャラとの距離が遠い……なんてことはない。むしろ、普通のアニメよりも距離が近いとすら言えるのではないのでしょうか?

だって、このアニメが「劇中劇」を徹底してくれるほど、僕たちは作品世界内のファンと同じ立ち位置から亜紀たちを応援出来るんですよ!?

作品世界内のファンがTVでさおりさんが出演するドラマを見るように、OVAを買った我々もさおりさんの出ている映像を見ているんです。

アニメの中で1回「劇中劇」というフィルターを挟むことで、逆に視聴者にとってアイドルたちがより身近に感じられる……この構造は凄い!!

そんな構造を実現してしまった『誕生』の尖りきったコンセプトからは、今なお新鮮な独自性と鋭い批評性が感じられます!

『誕生』の素晴らしさ 望月智充の冴え渡る演出

そんな先鋭的な魅了が光る本作の監督・脚本を務めたのは望月智充さん!

最近だとジブリにて監督を務めた『海が聞こえる』のリバイバル上映をきっかけに、広く再評価されている方なのですが……

アニメファン的には、女の子の魅力を引き出す遊び心と映像を引き締めるソリッドな演出で「生活感溢れる萌え」を日本のTVアニメに持ち込んだ大偉人なんです!

そんな望月監督の魅力の一つが、繊細な芝居づけと強烈な構図の巧さで、地に足の付いた作品でもメチャ完成度高いアニメに仕上げてくれること!

自ら脚本からコンテ演出までもを手がけていることもあってか、細部にまで「良いフィルムを作りたい」というこだわりを感じる仕事ぶりに惚れ惚れしてしまいます。

先述した「アイドルが出演している劇中作を描く」というコンセプトからして、そういった監督の手腕が窺い知れるかと思いますが……

そんな監督はじめ、スタッフたちのポテンシャルを存分に楽しめるのが、第1話「つま先で、恋」

高い演技力が持ち味のアイドル:亜紀が主演を務める、王道青春恋愛ドラマです。

キャラデザ・作画監督を務めた田中比呂人さんの繊細な可愛らしさ溢れる作画が、センチメンタルなドラマの色に合っていて良いんですよね~

普通の女子高生・亜紀がバイト先や予備校で出会った憧れの男子へ片思いを募らせる……という感じのストーリーで進む本作。

そんな第1話で最も映像のテンションが高まるのが、亜紀が憧れの彼とのデートに向けてワクワクしながら準備する一連のシーン。

学校に居ても家に居てもデートのことを考えてしまう亜紀の様子を、スピード感あるカット割りと場面転換で描く流れが非常にスムーズでカッコいいんですよ~

このシーンで注目して欲しいのは「トランジション」……つまりカット同士の繋ぎ方です!

中々ふつうに見ていると意識しないことだと思うのですが、TVアニメは一般的に1話につき300~400程のカットから構成されています

それらのカットはただ考え無しに重ねられているのではなく、それなりのルールの下で構成されていることが多いんですよ。そして良いアニメほど、繋ぎが上手いものなんですね!

例えば、天地開闢以来最高の傑作アニメ『シスター・プリンセスRepure キャラクターズ』最終話では、こうしたカット繋ぎがあります!

僕にとって「魂」のアニメが『シスター・プリンセス Repure キャラクターズ』なので、ぜひみんな観てほしい!

夢に溢れた「過去の自分」と、憂鬱を抱えた「今の自分」を、見事に「歩き」の動作と背景で完璧に繋いでいますね!

過去と現在……相反する色味の美しさも相まって、非の打ち所が無いカット繋ぎだと言えます!

閑話休題。

この『誕生』第1話では、亜紀がデートに意識を持って行かれている様子を効果的に描くため、ド派手なカット繋ぎがあるんです!

プールの授業でもちょっと集中しきらない亜紀が水面へ飛び込むシーンから……

お風呂につかりながら亜紀が悩むシーンへ!

亜紀の全身が水面へ飛び込む動きと、湯船の水面に入った後の亜紀の足……この「水面に何かが入る」という動きの共通点で見事にカットを繋いでいます!

普通、「学校のプール」から「亜紀の家のお風呂」では時間も場所も変わりすぎていて、中々スムーズに繋ぐことは出来ません。

この間に下校する様子や家の玄関を開けて脱衣所で着替えるシーンなど、学校のプールから家へと移動するカットを挟んでから、お風呂場でのシーンに繋げるのがセオリーだと言えるのではないでしょうかね?

しかし、そういった「必要だから入れなきゃいけない」カット……いわゆる「段取り芝居」は映像をもたつかせる、演出の敵です!

そこで、望月智充はこのように視覚的な「運動」「形状」という共通点を使い、見事に時空間の離れた「学校のプール」と「亜紀のお風呂」を繋いでみせるんですね~~~

アニメーションの流れを停滞させる段取り芝居を排除するだけでなく、アクロバティックな繋ぎ方で如何に亜紀がデートに夢中かを示す匠の技……!

しれっとこういうテクニックを忍び込ませてくる遊び心が、『誕生』というアニメの確かな面白さを底支えしていると言えるでしょう。

……というわけで、知る人ぞ知る傑作『誕生』について紹介していきましたが、いかがでしたか!?

望月智充の手腕によって「全編が劇中劇」というユニークな構成が見事にハマった本作は、間違いなくアイドルアニメの秀作!

本当に本当に、今こそ再評価されるべきOVAだと思います。ぜひぜひみなさんも本作をゲトって、『誕生』の精緻なクオリティに浸ってみてください!

萌えをもとめて三千里……萌研メンバーのアニメ探求はまだまだ続くわよ♪

コメント

  1. 学校のプールから風呂に場所が変わる演出は、見てないのに想像できました。お風呂という場所てキャラクターが悩む場所みたいな役割があるのか、たびたび出てきますね。マケインのEDとかもお風呂だし。

  2. 今回の記事もためになりました……! 次回もお待ちしています! :moyu_smile:

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