プレイバック・萌えエロ!「LO」の知られざるライバル、「COMIC RIN」を君は知っているか?

illustration by ヒラタ

アニメTシャツブームやアニクラなど、「萌え」がすっかりリバイバルしつつある令和。しかし、「萌え」がそんなオシャレなキーワードに収まらない、もっと混沌としたものであることは、萌研読者ならご存じのはずです。

忘れちゃいけない、忘れたくない。元来「萌え」は常に「エロ」と隣り合わせでありました……!

はじめまして、エロマンガ批評家という胡乱な肩書きで活動しております、新野安(あらのいおり)と申します。今回のコラムでは、今となっては忘れられつつあるゼロ年代の「萌え」エロマンガ雑誌、「COMIC RIN」について極私的な思い出を垂れ流しつつ、当時の「萌え」のあり方について振り返ってみたいと思います。

レッツ萌えエロ!

「COMIC RIN」とは何か?

「COMIC RIN」は、2004年12月に創刊されたエロマンガ雑誌です。茜新社から月刊で刊行され、2012年に休刊。表紙には「次代を担うコミック進化系!」というピンとこないコピーが掲げられておりますが、同誌のコンセプトが「萌え」であったことは、KIMちー先生の表紙イラストを見れば一目瞭然!

(COMIC RIN 2005年1月創刊号、および同2010年10月号)

萌え萌えですね~。黒目の大きさなんかいかにも。

ヒロインの年齢層が低めなのも特徴で、同じ茜新社の「COMIC LO」のライバル的な位置づけでもありました。ハイセンス・エクストリームな「LO」に対して、ほんわかした萌えを提供する「RIN」、という対比です。

『COMIC LO』2005年3月号

90年代的な「美少女」に対し、ゼロ年代的な「萌え」を打ち出す意図は、創刊号や創刊予告記事などを見てもわかります。まず「RIN」は、同じ茜新社が発行していた「ひな缶Hi!」「COMIC バニラ」が合併した雑誌でした。合併直前の両誌では、「RIN」が「かわいい+いやらしい=かわいやらしい」マンガ雑誌であることがアピールされていますが、これは直球で「萌え+エロ=萌えエロ」ということでしょう。

「COMICバニラ」最終号(2004)の読者投稿ページ。「かわいやらしい」新雑誌のコンセプトや、大きな版型・毎月発行がアピールされている。
「ひな缶Hi!」最終号(2004)に掲載された、「RIN」の予告ページ。

「ひな缶Hi!」最終号の新雑誌予告では、目玉の新連載として「この夏大旋風を巻き起こした新鋭・笹倉綾人がお送りする学園ドラマ」がフィーチャーされています。そう、後に『灼眼のシャナ』マンガ版を大ヒットさせる笹倉綾人先生です。

「大旋風」とはおそらく2004年6月に茜新社から発売された先生の単行本『少女流幸福攫取論』のことであり、同作の実績を買っての起用と思われます。その後の「RIN」でもツンデレ少女たちを描きまくっておられました。

(『灼眼のシャナ』第一巻(2005)、及びRIN掲載作をまとめた『たいらんと♡ぱにっしゅ!』)

「ひな缶Hi!」巻末の予告では表紙イラスト担当として蘭宮凉先生が紹介されていますが、実際の「RIN」表紙では既にお見せしたKIMちー先生のイラストが使われ、蘭宮凉先生は創刊号でピンナップ掲載となっています。蘭宮凉先生は90年代にフランス書院の雑誌「COMIC ZIP」の表紙を担当されており、当時既にキャリア10年以上のベテランでした。

一方でKIMちー先生は2004年にminoriのエロゲー「はるのあしおと」でキャラデザと原画を担当、同作のOPはあの新海誠が担当しています。その後KIMちー先生はRINの看板絵師としてずっと表紙イラストを描くことになりますが、結果的には茜新社が新時代にベットしたように見えます。

(「ひな缶Hi!」最終号の予告ページ、および蘭宮涼画集『月煌少女』(2000))

ちなみにKIMちー先生、笹倉綾人先生ともに「ひな缶Hi!」からの続投組であり、「RIN」は「ひな缶Hi!」から作家陣とコンセプトを受け継いでいるように見受けられます。約一年間で7号不定期刊行された「ひな缶Hi!」を通じ、「萌えの時代」を編集者たちが感じたからこそ、月刊誌として本腰を入れる選択がなされたのでしょう。

ゾッキ本の思い出

そんな「COMIC RIN」は、筆者にとっては非常に思い出深い雑誌でもあります。というのは、私が初めて継続的に購入したエロマンガ雑誌の一つだからです。

2010年、いざ満18歳になり、我慢していたエロ本を買おうと街をさまよう新野。しかし綺麗な書店で新品のエロ本を買うのは妙に気が引ける。結果的に私が当時エロ本を買い求めたのは、通学のため東京に出る狭間の乗り換え駅、駅前広場から少し路地裏に歩いたところにあった個人営業の古本屋です。

歓楽街の近くにある建物は木造内装で見るからにボロく、客から見えるところに未整理の在庫が積みあがっています。拾った本を売りにきた浮浪者の人がレジをよく占有していたり、どうにもうさん臭い。しかし、だからこそエロ本を買うにはふさわしく思えて、いつの間にか通うようになっていました。

この本屋で売っていたのがいわゆるエロ雑誌の「ゾッキ本」でした。これは、一度新刊として売れ残った雑誌を古書店が買い取ってリセールするもの。ゾッキ本は新刊と区別をつけるため、側面にマジックで赤い線(ゾッキ線)が引かれています。

(筆者所蔵のエロマンガ雑誌に引かれたゾッキ線)

この古本屋で売られていたゾッキ本エロマンガ雑誌は、主に「天魔」「メガストア」「マショウ」、そして「LO」「RIN」でした。だいたい1-2ヵ月遅れの入荷で、価格は定価の約半額です。私が当時、使える少ないお金から吟味に吟味を重ねて、メインで継続購読していたのが「メガストア」と「RIN」でした

当時はエロマンガがポルノとして極限化していた時期で、ひたすらエクストリーム&ハードな表現が追求されていました。「メガストア」「LO」はまさにその路線の急先鋒。一方で「RIN」は、どこかほんわか安心感のある雑誌として独自の立ち位置を保っていました。件の書店からもちょっと浮いていたと思います(笑)

あなたに萌えた、それだけでよかった

そんな「RIN」を代表する作家としては、すでに言及したKIMちー先生、笹倉綾人先生に加えて、やはり関谷あさみ先生に触れないわけにいきません。2023年発売の「放課後化学クラブ」がDLsiteで合計38万DLという化け物ロングランヒットを飛ばしている関谷あさみ先生ですが、やはり古参ファンとしては(激キモ表現)RINで連載された名作『YOUR DOG』をいつまでも推し続けたい!

学校になじめない中学生の少女・歩と、彼女を援交ビデオの被写体としてナンパした若者・マキの間の瑞々しいラブストーリー。とまとめると、今日的な倫理観からは「ありえねーだろ!」となると思います。でも関谷あさみ先生の少女マンガ的な心理描写があまりにも繊細で、今読んでもそれほど違和感なく入り込めるはず。

(『YOUR DOG』第一話より、単行本で追加された二人の出会いのシーン。あえて二人が顔を合わせるところは省略している。縦のコマ割りや余白の使い方に注目)

歩はマキに、つらい日常を変える匂いをかぎ取っただけかもしれない。マキは過去の恋愛のトラウマに一区切りをつけただけかもしれない。二人の関係が健全なのかどうか、永続的なのかどうか、作品はジャッジしません。センセーショナルなトーンを排し、あくまで淡々と、最低限のセンチメンタリズムをもって描かれるからこそ沁みる作品です。

ただ、『YOUR DOG』は「RIN」の掲載作としては例外的にハイブロウな作品です。むしろ「RIN」を支えていたのは、猫玄、ホーミング、巻田佳春、なるさわ景といった職人たちです。きっちり「萌える」ヒロインが出てきて、4ページ目にはエロシーンが始まってしっかり「抜ける」、そして読んだ後には中身を忘れている。よく言えば安定感に溢れている、悪く言えば毒にも薬にもならない。

(ホーミング『超満足デリバリー』、巻田佳春『RADICAL☆てんぷて~しょん』)

それでも、いやだからこそ、今心に来るのは、そういう「萌えて抜ける」だけの作品だったりします。今回「RIN」の作品を再読していて、古書店に通い雑誌の新号が出てるかチェックしていたあの日々(ゾッキ本だから入荷日が不定なのです)、大学での新生活に慣れない中でエロマンガを心の支えにしていたあの頃が思い出されたのでした。ノスタルジー、と言われればそうかもしれません。私も通史本の中だったら、まずは「COMIC LO」を優先して書くことでしょう。

でも、無理に背伸びしなくても、等身大の自分の生活に寄り添ってくれる美少女たち。それこそがあの時、いちばんリアルな「萌え」だったとも思うのです。いや、過去形ではなく、も。

新野安

エロマンガ批評家。評論同人誌〈エロマンガの読み方〉を編集・執筆。『エロマンガベスト100+』(三才ブックス)編著、『アダルトメディア年鑑2024』(イースト・プレス)執筆。グラビア・コスプレも研究中。

twitter.com/iorin_the_3rd

コメント

タイトルとURLをコピーしました

CAUTION!!

当記事には成人向けのコンテンツが含まれています。18歳未満の方のアクセスは固くお断りします。

あなたは18歳以上ですか?